働き方改革の目的とは?

「働き方改革には取り組んでいるし、成果はそれなりに出ています。」という企業様にどのような成果かうかがうと「残業が大幅に減りました。」と、残業削減に関するお声が多い印象です。最近のIDC社の調査でも、昨年までに続いて働き方改革の目的1位は「残業時間の削減」であったそうですが、働き方改革の目的はそこなのでしょうか?

「277社に聞いた働き方改革の効果を実感できた項目TOP3、3位セキュリティリスク低減、2位DXの推進、1位は?」

https://dime.jp/genre/872426/

変化の激しい時代、企業が長期的に競争優位性を持って利益を出し続けるには、働き方改革で残業削減だけを追求しては生き残れないと思います。デロイトトーマツ社は働き方改革を3つの段階で定期をしています。また、デロイトトーマツ社の調査によると、ほとんどの企業が「コンプライアンスの徹底」を終えた段階にあり、一部の企業だけが「既存業務の効率化」のステップに進めているようです。

しかし、本質的な働き方改革の目的というのは、ステップ1、2で進められた多様な働き方や業務改善によって空いた時間で何をするか?が重要になってきます。今目の前にある仕事には必ず終わりがあります。よって、企業が事業の発展をし続けるには、空いた時間をイノベーション創出のために投資していく必要があります。

残業削減という目的にとらわれている企業と、それだけに留まらず、未来を見据えてイノベーションを生み出そうとしている企業、10年先の未来では大きな違いが出てくるのではないでしょうか。

働き方改革の目的がわからず ”働き方改革疲れ”に

働き方改革の目的や会社や組織のあるべき姿が共有されていない組織では、「当社の社員は”働き方改革疲れ”をしています…」そんな言葉をしばしば耳にします。働き方改革で「疲れる」とはどのような状態なのか?話を伺うと、施策や情報が飛び交いすぎて、現場が「またか…」となっているそうです。人はなぜ?という理由が明確でないと行動できない傾向にあります。長時間労働の削減、時短勤務の施策、それらに関する情報提供だけでは、いつまで経っても働き方改革疲れからは抜け出すことができません。また、働き方改革は既存の業務を見直す、新しい取り組みであるため、明確な理由がなければ、現場からの反発ややらされ感を拭うことができません。

「働き方改革、長時間労働をやめればOKじゃない【JBpress】」

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57992

明治大学大学院グローバルビジネス研究科の野田教授の働き方改革に関する講演内容(※↑記事参照)でも、働き方改革は何のためにやるのか?が明確でないことが問題と言われています。

  • 今の働き方改革の中では職場の息苦しさの払拭がおざなりになっている
  • 働き方改革を何のためにやるのかが明確でないことが問題
  • やるべきことは働き方を変えることではなく成果を出すこと
  • インプットの減少の次はアウトプットを高める施策を
  • イノベーションがやりがいに繋がる
  • 「働きがい=働きやすさ×やりがい」
  • 活性化した組織は内側がまとまっているので目が外に向く
  • 内側がまとまった状態をトップ主導で目指すべき

このようなことが書かれています。身近な例でも、プレゼンテーション等で終わり時間(ゴールやポイント)がわからないで始まるプレゼンテーションは、疲れてしまいます。なので、「本日の重要なポイントは3つ」、「●●を理解してもらうことが目的」、「全体の構成は…」といった工夫を皆さんされますよね。

また、興味深かった内容としては、働きやすさとやりがいは別個で捉えられがちですが、”働きやすさ”の向上と顧客価値に繋がる活動が増え、”やりがい”が発生したことでエンゲージメントスコアが向上した事例があります。働き方改革が「働きやすさが向上し、やりがいが生まれ、働きがいに繋がる」そんな活動にできれば、”働き方改革疲れ”は防げそうでしょう。

要注意!働き方改革の思わぬ落とし穴

ここまでで、「うちの残業は減っているし、働き方改革もそれなりに社内でうまくいっている」と言われる企業様も多いかと思いますが、実はそういった企業様でも働き方改革の”思わぬ落とし穴”にハマってしまっているケースが見受けられます。

「働き方改革」がもたらした「副作用」との向き合い方【Wedge】

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17716

早稲田大学教育・総合科学学術院の黒田教授の記事です。総務省の統計から、残業が月間60時間超の「長時間労働者」は、企業規模によらず減少傾向であることがうかがえます。記事内では、そこから生じてる副作用として、

  • ①長時間労働で担保されていたOJTの減少による、若年層の人的資本形成の損失
  • ②マネージャー層へのしわ寄せ

の二点が挙げられています。これまでの弊社顧客ヒアリングでも②は実際の問題として顕在化している企業様も少なくありません。社員アンケートで過密労働気味のマネージャーを見て「マネージャーになりたくない」と感じている若手が多いという結果が出ている企業様もございました。

ただ、①に関しては数値上見えづらいため把握していない人事の方も多そうです。若手の育成は、手遅れになってしまってからでは致命傷になりかねない問題です。ここは減らしてはいけない領域の一つと言えます。

働き方改革で減らすべきもの、減らすべきでないものそれらをきちんと理解している企業と、そうではないない企業、これらの差が、数年後の売り上げや利益の差となって現れるのではないでしょうか。